ししとうブログ

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【リハ手技】臨床での徒手的リラクゼーションとは?

身体障害の領域で働く新人セラピストの方が、割と抱える悩みが「手技」。

この記事では、“リラクゼーション”について解説と紹介を行なっていきます。

是非参考にして、臨床場面で用いてください。

 

目次

リラクゼーションとは?

 

そもそも、一般的にリラクゼーションとは、

身体的・精神的・情緒的緊張のない状態、心身ともにストレスから解放された状態』を誘導する事にあたります。

名前の通り、リラックスした状態を作るという事ですね。

リラックスした状態とは、

  • 交感神経の働きが抑制され、副交感神経の働きが亢進する状態(心拍数や呼吸数の減少)  
  • 筋肉が弛緩している状態
  • 精神的な緊張・ストレスが軽減している状態(脳波はα波〜θ波優位)

などを示します。

 

身体障害領域に用いられる徒手的リラクゼーション

リハビリの臨床場面では、このリラクゼーションという手法が用いられる事が数多くあります。

身体障害の患者に対しては、筋緊張の緩和を目的とする徒手的リラクゼーションが行われる事がほとんどです。

 

徒手的リラクゼーションとは

皮膚・筋・筋膜・関節等の感覚受容器(表在・固有感覚受容器)への刺激により、

異常な筋緊張の亢進に対して、無痛性刺激を追求した高いリラクゼーション効果のある徒手による治療法の事です。

 

徒手的リラクゼーションの直接的効果

筋緊張の緩和
触圧覚受容器への刺激が入力され、α運動ニューロンが抑制されることで、筋緊張が低下します。

疼痛の改善
ゲートコントロール理論により、痛覚神経線維のインパルスが抑制され、痛みが軽減されます。
結合組織の粘・弾性の改善
結合組織への圧迫刺激により、結合組織の柔軟性が得られます。
血液・リンパの改善
筋緊張が緩和すると、今まで筋に圧迫される形になっていた、周辺組織の血流・リンパ流の改善にもつながります。
関節可動域の改善
筋緊張の緩和・結合組織の粘弾性の改善により、それらが関節可動域の制限因子となっている場合は、可動域の拡大が期待できます。
精神的ストレスの軽減
精神的に緊張すると交感神経の活動が活性化され、筋緊張も亢進します。

逆を言えば、筋緊張が緩和すると精神的な緊張も緩和します。

緩やかな触圧覚刺激は、交感神経の活動を減少させ、副交感神経の活動を優位にさせます。

このことにより、筋緊張を緩和させ、筋緊張の緩和により、精神的な緊張の緩和を得ることが出来ます。

どんな人に徒手的リラクゼーションを用いるのか?

誰彼かまわず手技を用いる事が、非常にナンセンスな行動なのは想像に難くありません。

しっかり患者さんを“評価”し、“目的”をもった上で、治療手技としてリラクゼーションを用いましょう!

評価と適応

患者さんの病状は、個別性があります。

そのため、リラクゼーションを用いる事が適しているかを評価する必要があります。

新人の方は、評価が一苦労だと思います。

難しいですもん(笑)

ポイントは、筋緊張ですよね。

①筋緊張に異常(亢進)があるのか?

②その原因は何なのか?

この2つだけ押さえておいて、評価を行いましょう。

原因が評価出来れば、リラクゼーションでの効果が期待出来るかどうかも分かります。

「②が難しいんだよハゲ!」と言われそうな気がしますが…(笑顔)

 

そして、リラクゼーションを用いる優位性も考慮しましょう。

ストレッチやマッサージなどの他の徒手的治療、物理療法や他の運動療法と比べて、最も適している場面で使える事が理想です。

リラクゼーションのメリット

  • 無痛性刺激に即しており、自律神経の調律も図れるため、限りなく心身ストレスが少なく済む。
  • 軟部組織循環機能の改善も同時に図れる。
  • 特別な器具が必要ない。
  • ある程度即時的に効果が得られる。

リラクゼーションのデメリット

  • 感覚由来の治療効果の割合が大きく、感覚障害や意識・認知機能レベルによっては、FBが得られにくい。
  • リラックス出来る状況を作る反面、触り方・動かし方・肢位や姿勢に細かい技術を要する
  • 即時効果がある反面、リラクゼーションのみ行なってしまい、目的の無い治療になる事がある。

 

実際に臨床で用いている立場としては、やはりすぐに効果が得られるのは良い事だと思います。

限られた時間の中で、リラクゼーション効果を出した後に、それを利用しながら可動域訓練を始め、動作訓練や上肢練習などに繋がる事が出来るからです。

ですが、やはり手技は経験を積まなければ中々身につきません。職場の先輩に指導してもらったり、講習会などに参加する必要があります。

 

リラクゼーション自体が目的にならないように注意

新人さんに限らず、ついリラクゼーション自体が訓練の目的になってしまうセラピストも沢山います。

手技のプライドがやたら高いセラピストが

「ほら、緊張が落ちてるでしょ?」

などと、学生さんに向かって鼻高々に語っている場面をたまに見ます。

これ自体は別に良いんですけど、時間いっぱいそれだけして終わる人を見た時は、唖然としました。

 

リラクゼーションは、筋緊張を緩和する事を目的とする場合もあります。

ですが、作業療法や理学療法のリハビリは、リラクゼーションの効果を得る事が目的ではありません

患者さんが、その人らしい生活を獲得する事が目標であり目的です。

つまり基本的には、リラクゼーションを行なって効果が得られた後は、その効果を活かして、目標に即した訓練を行なうという流れになります。

リラクゼーションなどの手技が、その目的と繋がっているかを考えて治療選択しましょう。